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岐阜地方裁判所高山支部 昭和33年(わ)61号 判決

被告人 田中正男こと井野根正男 外六名

主文

被告人井野根正男を懲役五年に、同太田彰を懲役三年六月に、同曹芳男、同朴正熙を各懲役三年六月及び各罰金千円に、同小川幹雄を懲役二年六月に、同甲を懲役三年以上五年以下に属する。

被告人曹芳男及び同朴正熙において右罰金を完納することができないときは、各金二百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

未決勾留日数中各百二十日を右各懲役刑に算入する。

被告人高山忠夫は無罪。

昭和三十三年七月十二日付起訴状記載の公訴事実中第一の被告人七名が共謀の上、A及びBの両名を不法に監禁し、多衆の威力を示して右両名に対し暴行脅迫を加え、因て夫々傷害を負わせたとの点について、被告人小川幹雄は無罪。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人井野根正男は

一、昭和三十三年三月十七日午前零時頃松本市西堀町飲食店「松美」の表入口附近において同店女中竹内八重子(当時二十一年)に対し些細なことに因縁をつけ、手拳で同女の顔面を殴打し、因てその口唇部に全治約三日間を要した傷害を負わせ、

二、同日午前零時過頃前記の如く暴行中仲裁に入つた荻窪徳好(当時二十年)に対し因縁をつけ、同人を同市松栄町セントラル座前附近へ連れ出し、同人に対し「金を三百円よこせ」と申向け、若し要求に応じなければ如何なる危害が加えられるかも知れないような気勢を示して同人を畏怖させ、因て即時同所において同人をして現金三百円を交付せしめてこれを喝取し、

第二、被告人井野根正男、同小川幹雄は共謀の上、昭和三十三年四月二十日頃の午後八時頃松本市内県営運動場附近において折柄花見に来ていた大久保好治(当時三十四年)に対し「飲ませろ」と申向け、若し要求に応じなければ如何なる危害が加えられるかも知れないような気勢を示して同人を畏怖させた上、同所附近の仮設飲食店において同人をしてビール一本(価格金二百円)を提供せしめてこれを喝取し、更に逃げようとした同人を同所附近で掴まえ「逃げれば仲間を呼ぶぞ、金を出せ」と申向けて同様同人を畏怖させ、因て即時同所において同人をして現金三百円を交付せしめてこれを喝取し、

第三、被告人太田彰は

一、昭和三十二年十月十一日頃の午前零時半頃松本市緑町カフエー、「ルノアール」において仲間数名と飲酒中、予て知合の小松喜一が相客の小山源七(当時四十六年)と喧嘩斗争をはじめたので右小松に加勢すべく決意し、同人及び仲間数名と犯意を共通して手拳或は腰掛椅子を以て右小山の顔面、頭部等を殴打し、因て同人に対し全治約一週間を要する頭頂部裂創を負わせ、

二、昭和三十三年五月下旬頃の昼頃同市南源池千二百七十番地の清沢由比古(当時二十六年)に対し電話を以て「俺も松本で喧嘩して警察え連れて行かれそうだから若い衆を連れて旅に出ようと思うが、金を少し都合してくれ」等と申向け、若し要求に応じなければ同人が同市緑町に経営するバアー「エイト」の営業に如何なる妨害が加えられるかも知れない旨察知せしめて同人を畏怖させ、因て同日午後三時頃同人方附近の相沢病院前路上において現金千円を、同日午後六時頃前記バアー「エイト」附近路上において現金千円を夫々交付せしめてこれを喝取し、

第四、被告人曹芳男は

一、昭和三十三年五月二十五日頃松本市二の丸中央公園入口附近の柳屋観光会館内バアーにおいて倉島武重(当時二十三年)等と飲酒中、同人に対し些細なことに因縁をつけ、同人を同所附近堀端へ連れ出し、手でその顔面を殴打して暴行をなし

二、大韓民国に国籍を有する外国人で外国人登録証明書の交付を受けている者であるが、同年六月二十日出稼地である岐阜県吉城郡上宝村地内において外国人登録証明書を携帯しなかつた、

第五、被告人朴正熙は

一、木村高男こと曹高男と共謀の上昭和三十三年四月二十五日午後十一時過頃松本市新伊勢町旅館「高山館」前附近路上において折柄通行中の宮島朝光(当時二十三年)及び山口喜作(当時二十三年)に対し些細なことに因縁をつけ、交々右両名の顔面等を手拳で殴打或は足蹴する等の暴行を加え、右山口に対しては因て全治約十日間を要する顔面挫傷等の傷害を負わせ、

二、同年五月中旬頃同市繩手通り路上において同市緑町でバアー「エイト」を経営する清沢由比古(当時二十六年)が通りかかつたところ、これを呼止め「今日皆がエイトの店をがたくると言うのを俺達が止めてやつたから今晩一杯飲ませてくれ」等と申向け、以て若し要求に応じなければその営業に如何なる妨害が加えられるも知れない旨を仄めかせて同人を畏怖させた上、その頃前記バアー「エイト」において同人をしてビール三本(価格金六百円)を交付せしめてこれを喝取し、

三、同年六月四日頃鈴木某と共謀の上同人の知つている某飲食店の女中と交際していた上条健二(当時二十年)をその勤務先から呼出し同市繩手通り四柱神社境内において同人に対し鈴木の馴染女を取つたと因縁をつけ、「こんな場合には穏便に話をつけた方がよい、多少色をつければこのまゝ済ませてやる」等と申向けて暗に金品を要求し、若し要求に応じなければ如何なる危害が加えられるかも知れないような気勢を示して同人を畏怖させ、因て即時同所において同人をして腕巻時計一個を交付せしめてこれを喝取し、

四、同月十四日前記上条健二の勤務先え電話をかけ同人に対し「金を千円貸してくれ、神社え持つて来い」等と申向け、前記四柱神社へ来た同人が金の都合ができなかつた旨断つたところ、同所において「お前のつけのきく店で飲ませてくれ、そうすれば女のことは一切水に流してやる」等と申向け、若し要求に応じなければ如何なる危害が加えられるかも知れないような気勢を示して同人を畏怖させた上、その頃同市西五町百七十六番地飲食店「清水屋」において酒、肉丼等価額二千百七十円相当の飲食物を提供せしめてこれを喝取し、

五、大韓民国に国籍を有する外国人で外国人登録証明書の交付を受けている者であるが、同月二十日出稼地である岐阜県吉城郡上宝村地内において外国人登録証明書を携帯しなかつた、

第六、被告人甲は

一、昭和三十三年四月十日午後四時頃松本市緑町七十九番地パチンコ店「アルプス」において仲間の萩原隆能外数名と共に遊戯中、右萩原が同店々主岩瀬千幸(当時五十一年)から遊戯上の不正を咎められたことに憤慨して同人に組付いたので、右萩原に加勢すべく決意して同人及び仲間数名と犯意を共通し、右萩原において右岩瀬の股間を膝で蹴り上げ或は押し倒し、被告人甲においてその胸部を手で突き、因て同人に対し全治約二週間を要する左陰股部、上胸部等に打撲症を負わせ、

二、前記日時場所において松本警察署大名町巡査派出所勤務司法巡査松本義則が右犯行の現行犯人として右萩原を逮捕しようとした際同巡査の腹部を後方から両手で抱きつく等の暴行を加え以て公務員である同巡査の職務の執行を妨害し、

三、五十嵐征男と共謀の上同月六日頃同市本町正安寺墓地附近路上において婦女(十六年位)を同行していた渡辺章(当時十九年)及び小川武義(当時十九年)の両名に対し「俺の女に手を出すな」と因縁をつけ右両名の顔面を手で殴打、或は腹部を足蹴する等の暴行をなし、

四、同月十三日午後十時半頃同市西堀町飲食店「八丁」前路上において武井和男(当時十九年)に対し些細なことに因縁をつけ手で同人の左頬を強打して暴行をなし、

五、武江澄男と共謀の上前記日時頃右暴行を傍観していた青島清春(当時二十二年)に対し「人の喧嘩を見て何が面白い」と因縁をつけ、同町飲食店「香欄亭」前路上において同人の胸倉を掴んで引き倒し顔面等を手で殴打或は肩等を足蹴し、因て同人に対し加療約一週間を要する両側肩胛部打撲症を負わせ、

六、武江澄男他数名と共謀の上同月十四日午前一時頃同市上土町二百十四番地飲食店「本郷バー」前路上において同店から出て来た赤羽幹次(当時三十六年)及び高橋安雄(当時四十四年)の両名に対し些細なことに因縁をつけ、同店内において右赤羽の顔面等を手で殴打或は胸部を足蹴し、右高橋の顔面、腕等をビール瓶、椅子等で殴打し、因て右赤羽に対しては全治約五日間を要する顔面頸部打撲傷の右高橋に対し全治五日間を要する左上腕擦過傷等の各傷害を負わせ、

第七、被告人等は松本市内で知合つた不良仲間にして、昭和三十三年六月十六日頃曽つて被告人井野根正男が稼働していた岐阜県吉城郡上宝村大字神坂所在の大豊建設株式会社中崎作業所中川班飯場へ相携えて来たり、ともに土工として稼働していたものであるが、

一、被告人井野根正男、同太田彰、同曹芳男、同朴正熙、同甲は同月十九日午後七時頃前記中川班労務者用宿舎階下東側の居室(約十畳)において飲酒中、口々に同僚のAが青刺をして居り且つ元やくざであつた等と称したのは生意気だ等と言い合つた挙句、同人を同所に監禁して暴行を加えようと共謀し、同日午後八時頃被告人井野根の指示に従い、同太田、同甲の両名において中川班夫婦用宿舎から右A(当時三十一年)を呼出し、前記被告人等五名において前記居室西側出入口附近に坐つた同人の前後左右に位置してこれを取囲み、殊更に因縁をつけながら交々手拳でその顔面、頭部等を殴打或はその全身を足蹴する等の暴行を加えた他、被告人井野根、同曹等において交々さく岩機用のみ(証第三号)を持ち、同朴、同甲等において交々ナイフを持つてその身体に危害を加えるような気勢を示した上、被告人曹において右さく岩機用のみでその右胸部を突き、被告人朴において右ナイフでその背部に切りつけ、或は兵児帯(証第四号)でその頸部を締めつけ、途中同日午後八時半頃更に被告人井野根の指示に従い被告人甲において前同様右Aの妻B(当時二十年)を呼出し、同女を前記居宅内に右Aと並べて坐らせた上、被告人等五名共謀してこれを取囲み、被告人曹において前記ナイフを同女の頭上の柱に突き刺してその身体に危害を加えるような気勢を示し、被告人井野根においてその顔面附近を足蹴し、同日午後九時前頃中川班々長の妻中川文子に発見制止されるまでの間右A夫婦の脱出を阻止して不法に監禁し、前記暴行に因つて右Aに対しては約三日間の安静休養を要する左外耳翼上部外面擦過創、左下背部表皮切創、左前下胸部打撲傷等の傷害を、右Bに対しては一両日の安静休養を要する左前頭部圧重感等の傷害を夫々負わせ、

二、被告人井野根正男、同太田彰、同曹芳男、同朴正熙、同小川幹雄、同甲は前記犯行の直後右Bを交々強姦しようと共謀し、同日午後九時過頃被告人井野根の指示に従い、同太田、同甲において再び前記夫婦用宿舎から同女を甘言を以て誘い出し、前記被告人等の居室に入室せしめた上、被告人井野根において前記暴行により畏怖している同女に対し更に「言うことを聞かんと又あんな目にあうぞ」等と申向けながら同女を自己の布団の中に引摺り込んで馬乗りになる等の暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上ズロースを脱ぎ取つて強いてこれを姦淫し、次いで被告人曹において同女を自己の布団の中に引摺り込んで強いて姦淫し、更に被告人太田において同女を自己の布団の中に引摺込んだ上、同所で同被告人、同朴、同小川、同甲において順次強いて姦淫し、

たものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(累犯となる前科)

被告人井野根正男は昭和二十九年五月二十五日長野地方裁判所飯田支部において傷害罪により懲役四月に処せられ、更に昭和三十一年二月二十五日大阪地方裁判所において恐喝罪により懲役八月に処せられ、夫々当時右各刑の執行を受け終つたもので、この事実は第五回公判調書中同被告人の供述記載部分及び検察事務官作成の同被告人に対する前科調書によつて明らかである。

(法令の適用)

法律に照すと被告人井野根正男の判示第一の所為中一の傷害の点は刑法第二百四条、罰金等臨時措置法第二条、第三条に、二の恐喝の点は刑法第二百四十九条第一項に、同被告人及び同小川幹雄の判示第二の恐喝の点は同法第二百四十九条第一項、第六十条に、被告人太田彰の判示第三の所為中一の傷害の点は同法第二百四条、第六十条、罰金等臨時措置法第二条、第三条に、二の恐喝の点は刑法第二百四十九条第一項に、被告人曹芳男の判示第四の所為中一の暴行の点は同法第二百八条、罰金等臨時措置法第二条、第三条に、二の外国人登録法違反の点は同法第十八条第七号、第十三条第一項に、被告人朴正熈の判示第五の所為中一の山口喜作に対する傷害の点は刑法第二百四条、宮島朝光に対する暴行の点は同法第二百八条(両者につき更に各刑法第六十条、罰金臨時措置法第二条第三条)に、二、三及び四の各恐喝の点は各刑法第二百四十九条第一項(三については更に同法第六十条)に、五の外国人登録法違反の点は同法第十八条第七号、第十三条第一項に、被告人甲の判示第六の所為中一、五、六の各傷害の点は各刑法第二百四条、第六十条、罰金等臨時措置法第二条、第三条に、三、四の各暴行の点は各刑法第二百八条、罰金等臨時措置法第二条第三条(一及び三については更に各刑法第六十条)に、二の公務執行妨害の点は同法第九十五条第一項に、被告人井野根正男、同太田彰、同曹芳男、同朴正熈、同甲の判示第七の一の所為中各不法監禁の点は各同法第二百二十条第一項、第六十条に、各傷害の点は各同法第二百四条、第六十条、罰金等臨時措置法第二条第三条に、同被告人等及び同小川幹雄の判示第七の二の強姦の点は刑法第百七十七条前段、第六十条に該当するところ、判示第七の一について、各不法監禁は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であり、これと各傷害とは夫々手段結果の関係にあるから刑法第五十四条第一項前段、後段第十条に則り犯情の最も重いと認めるAに対する傷害罪の刑に従つて処断するが、暴行、傷害及び公務執行妨害の各罪についてはいずれも懲役刑を、外国人登録法違反罪についてはいずれも罰金刑を選択した上、被告人井野根正男については前示前科があるから同被告人の各罪につき刑法第五十六条第一項、第五十七条、第五十九条を適用し且つ強姦罪については更に同法第十四条の制限に従つて夫々累犯加重をなし、各被告人(被告人高山忠夫を除く、以下同じ)の叙上当該各罪は夫々同法第四十五条前段の併合罪であるから、各被告人(被告人曹芳男及び同朴正熈の各外国人登録法違反罪を除く)につき同法第四十七条本文、第十条に則り最も重い判示第七の二の強姦罪の刑に同法第十四条の制限に従つて法定の加重をなし、被告人曹芳男及び同朴正熙については更に同法第四十八条第一項により各外国人登録法違反罪の罰金刑を夫々併科することとして右各刑の範囲内において被告人井野根正男を懲役五年に、同太田彰を懲役三年六月に、同曹芳男、同朴正熈を各懲役三年六月及び各罰金千円に、同小川幹雄を懲役二年六月に、同甲は少年であるから少年法第五十二条第一項、第二項に則り同被告人を懲役三年以上五年以下に処し、被告人曹芳男及び同朴正熙については同法第十八条に従い同被告人等において右各罰金を完納することができないときは各金二百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することとし、各被告人につき同法第二十一条に則り未決勾留日数中各百二十日を右懲役刑に算入する。なお訴訟費用については被告人等はいずれも貧困のためこれを納付することのできないことが明かであると認められるから刑事訴訟法第百八十一条第一項但書により被告人等に負担させないこととする。

検察官は判示第七の一事実(昭和三十三年七月十二日付起訴状記載の公訴事実中第一の事実)を以つて暴力行為等処罰に関する法律違反、監禁傷害の罪に該ると主張するが、本件は判示摘示のようにA及びBに対する傷害罪のみが成立し、別に暴行の罪を含む暴力行為等処罰に関する法律違反の罪が構成せらるるものでなく、また右両名に対し多衆の威力を示し兇器をその身辺に擬して脅迫を加えたとの点は判示認定の如く右両名の「身体」に対する害悪の告知による脅迫と認められるところ、該所為は判示認定の如く右両名に対し傷害行為を為さんとするに際し、その傷害行為を実現する手段乃至は方法として敢行されたものであることが認められるので右脅迫行為は判示傷害行為に吸収され、別に脅迫の罪を含む暴力行為等処罰に関する法律違反の罪を構成するものではないと解する。

(被告人小川幹雄及び同高山忠夫に対する無罪理由)

昭和三十三年七月十二日付起訴状記載の公訴事実中第一の被告人七名が共謀の上A及びBの両名を不法に監禁し、多衆の威力を示して右両名に対し暴行脅迫を加え、因つて夫々傷害を負わせたとの点について、被告人小川幹雄、同高山忠夫がその実行々為を分担したことは勿論、その共謀に参加したことについてもこれを認めるに足る確証がない。尤も証人Bは「被告人高山が他の被告人二名と共にAを取囲んでいた」旨証言しているが、同被告人が常に就寝する場所にして且つ本件当時にも坐していた位置が右Aの坐していた位置に極めて接近していたこと及び本件を目撃していた他の証人等が同様の供述をしていない点等から検討すれば右証人の「取囲んでいた」旨の判断は俄かに措信し難く、又証人高錫敦は「高山か小川かはつきりしないが怪我をしない方の男はAの斜横に立つて蹴とばしていた」旨証言しているが、同証人自身「しかし結局顔を確かに憶えていないのではつきりしたことは言えない」旨供述して居り、出島重雄の司法巡査に対する供述調書中「高山が殴るような気勢を示していた」「Aを囲んでいるときごちやごちや言つていた」旨の記載があるが「この男のやつた行動についてははつきり記憶ありません」旨の記載があつていずれも極めて曖昧な供述であり、又被告人太田彰は当公廷において「高山、小川は酒を飲まなかつたがAの話には全員同調していた」「小川高山もAを取り巻いてがやがや言つていた」旨供述しているが、これは証人福沢正並に他の被告人等の各供述及びその捜査官に対する各供述調書に照し俄かに措信し難い。以上のように各証拠を検討するとこれらの証拠はいずれも直ちに取つて断罪の資とはなし難いので結局犯罪の証明がないことに帰するから刑事訴訟法第三百三十六条によつて被告人高山忠夫に対し無罪の、同小川幹雄に対してはこの点についてのみ無罪の各言渡を為す。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 松本孝一 小森武介 谷清次)

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